社長 × 事業部長 対談
~技術の進歩・社会の変化を常に先取りし、未知の領域を切り拓いていく~
PROFILE
対談メンバー
代表取締役社長 CEO:廣中 龍蔵
カスタマーエクスペリエンス事業部 事業部長:大西 健太郎
マーケティングDX事業部 事業部長:三輪 功
社会インパクト事業部 事業部長:濱村 誠
これまでの経歴と社長就任の感想
──まずは、廣中さんのネットイヤーグループでの経歴と、社長就任にあたっての率直な感想をお聞かせください。
廣中: 私はインターネットが世の中に急速に普及しはじめた2001年にネットイヤーグループにジョインしました。主に戦略部門を率いて、多くのクライアントと新しいビジネスやサービスを立ち上げてきましたが、2008年に東証マザース(現:東証グロース)に上場し、翌年の2009年にもう一度原点に帰ろうと我儘を言って、コンサルティング会社を設立し独立しました。独立してから15年、自分で会社を運営しながらも、ネットイヤーグループとは一緒にお客様に向き合って共同提案をしたり、多くのプロジェクトをともに推進してきました。外からネットイヤーグループに関わり、その成長を見守っていたものの、今回、代表就任のオファーを受けたときは、まさに青天の霹靂、「人生でこんなことが起きるのか」と思うほど驚きました。
ただ、今の私があるのは、ネットイヤーグループでクライアントやパートナー、チームメンバーに鍛えていただいた8年間があったからです。社会全体が変革期を迎えている今だからこそ、ネットイヤーグループの役に立ちたい、恩返しがしたいと思い、代表就任をお引き受けしました。
今後のネットイヤーグループの方針
──今後のネットイヤーグループ全体の方針を教えていただけますか。
廣中: 私たちが事業を展開している業界は、変化のスピードが非常に早く、生成AI技術のような新しいテクノロジーが日々登場し、ビジネスや生活に変化を起こしています。こうした状況に対応するためにも、今後は事業領域拡大に向けた投資を積極的に行っていきます。最先端技術を持つスタートアップやベンチャーとの連携を図るなど、新しい取り組みを進めて私たち自身もスピーディーに変化していきたいと考えています。私は、この大きな変革期を社員のみなさんと一緒に楽しみたいと思っています。私が以前ネットイヤーグループでプロジェクトを率いていたときも様々な変化があり、クライアントと一緒に新しい事業を生み出していく大変さ・難しさをたくさん味わいました。でも、それ以上に仕事が楽しくて楽しくて仕方ありませんでした。この「新しいものを創造する」喜びを、社員やネットイヤーグループに関わる方々とぜひ一緒に味わいたいと思っています。
カスタマーエクスペリエンス事業部の紹介
──では、ここからはネットイヤーグループの事業内容についてお伺いします。まずは、大西さんが率いている「カスタマーエクスペリエンス事業部」の概要をお聞かせください。
大西: カスタマーエクスペリエンス事業部では、Webサイトや各種サービスを利用するエンドユーザーの「体験」をデザインすることで、クライアントのビジネスを支援している部門です。ユーザー体験の設計や、それに伴うUIの実現によって、ユーザーの行動を大きく変えるような仕組みを構築していくことが主なミッションです。例えば、ターミナル駅を利用する際に、事前にサイトで乗降場所を調べて行っても、現地のマップと相違があり、なかなか目的地に辿り着けないことがあると思います。こうした課題に対して、私たちは、サイト上で知りたい情報にスムーズに辿り着けるようにするのはもちろん、現地のサイトマップといったリアルな接点でも同じ体験ができるように、一貫性のあるUXデザインを提供しています。
私たちの事業部では、大手通信事業会社、大手空港といったクライアントと長くお付き合いをさせていただいており、その他にも普段の生活の中でふれ合う機会が多くあるような、社会基盤を担うナショナルクライアントとのお取引が多いことも特徴のひとつです。
──大西さんは、ネットイヤーグループの強みはどのようなところにあると考えていますか?
大西: 「ユーザーの体験をより良くしたい」という考え方が、職種を問わず、社内全体に浸透していることが強みです。1999年の創業から20年以上にわたり、ずっとUXに向き合い続けてきたからこそ得られたものだと思っています。また、描いたUXデザインを必ず実現していく体制が整っていることもネットイヤーグループの特徴です。プロジェクトが発生するごとに、プロデューサー、プロジェクトマネジャー、ディレクター、UXデザイナー、アナリスト、エンジニアなど、社内のスペシャリストを集めて最適なチームを編成し、クライアントに一貫して伴走します。ビジネスパートナーとして伴走を続ける中で信頼関係を構築し、より良いユーザー体験を一緒に考えることで、新たな試みに繋がるケースも少なくありません。マーケティングDX事業部の紹介
──では、三輪さんが事業部長を務める「マーケティングDX事業部」の概要を教えていただけますでしょうか。
三輪: デジタルとリアル、双方の顧客接点で心地良いユーザー体験を実現するためには、様々なデバイスで情報をタイムリーに届けたり、店頭でスムーズに買い物ができたりする仕組みづくりが必要です。この仕組みを構築し、クライアントと一緒に運用しながら、目指すゴールに向けて伴走していくのが、マーケティングDX事業部のミッションです。主には、ユーザー視点で構築されたWebサイトやアプリ、サービス、店舗などを起点に、マーケティング活動の各ファネルを一気通貫で支援することに重きを置いています。マーケティング戦略の立案・ツールの導入から、ロイヤルカスタマーを育成するためのCRMなど、成果を生むための機能を提供してPDCAを回しています。
私たちの事業部が担当しているクライアントは、大手外資系コーヒーショップや大手ファストフードチェーン、大手コンビニエンスストアチェーンをはじめ、電力会社、鉄道会社、百貨店など幅広く、業界問わず支援をさせていただいています。
例えば、コーヒーショップやファストフード店のモバイルオーダーの体験設計も私たちが担当しており、「アプリやWebサイトで事前にメニューを選んで注文し、店舗で受け取る」、この一連の流れの中で、デジタルとリアルの体験がフィットするような仕組みづくりを担っています。
──三輪さんが考えるネットイヤーグループの強みを教えてください。
三輪: 「マーケティングツールを導入します」「広告・SEOの最適化をやります」など、専門分野に特化したソリューションを提供している会社は多くありますが、私たちは「お客様にとって何が最適か」を軸に、一貫したソリューションを提供できることが大きな価値だと思っています。「作って終わり」ではなく、エンドユーザーにとっての新しい体験の創造や、クライアントが目指す売上目標の達成までサポートできる体制が整っています。クライアント特性やターゲットについて
──2部門とも大手企業のクライアントが中心ですが、顧客のターゲットは絞っているのでしょうか?
大西: 大規模かつ長期的なお取引を見込めるクライアントのビジネスパートナーとして、これまでにないチャレンジングな試みをしていこうというのが、ネットイヤーグループ全社の方針です。結果としてナショナルクライアントが中心になっており、近年は顧客数も順調に増加しています。三輪: 私たちの事業部では、ネットイヤーグループが提供できるソリューションやケイパビリティを活用して、新規のクライアント開拓にも積極的に取り組んでいます。一方で、国内外のスタートアップと協業し、マーケティングツールやAIソリューションといった新しいサービスの開発にも取り組んでいます。
NTTデータグループ参画によるメリット
──2019年からはNTTデータグループに参画されています。NTTデータグループとの資本業務提携は、ネットイヤーグループの事業展開において、どんなメリットがあるのでしょうか?
廣中: 日本有数のSIerであるNTTデータグループとの協業には大きな可能性を感じています。例えば、さきほど事例に上がった「モバイルオーダー」をエンドユーザーが利用すると、「どんな人が何の商品を買ったか」といったデータが瞬時にNTTデータ側のデータベースへ受け渡されます。注文頻度、購入した商品の相関性など、データベースに蓄積されている膨大なデータを活用すれば、エンドユーザーにとってさらに新しい体験が提供できるはずです。フロントエンドに強い私たちと、バックエンドに強いNTTデータのジョイントはすでにスタートしていますが、今後はNTTデータグループが持つプラットフォームを一層活用して、クライアントに貢献していきたいです。社会インパクト事業部の紹介
──次に、濱村さんから「社会インパクト事業部」の事業概要についてご紹介をお願いします。
濱村: 大西さんや三輪さんが率いている事業部は、クライアントやその先のエンドユーザーに向き合ってサービスを提供し、社会を豊かにしています。この2部門とはまた違った立ち位置で、「社会」に向き合って事業を展開しているのが社会インパクト事業部です。現在、SDGsへの関心は年々高まりを見せており、企業も社会課題の解決に取り組むことが求められています。そこで、ネットイヤーグループは利益追求だけではなく社会課題にもしっかりと向き合っている会社だと明確にメッセージを打ち出す必要があると考え、2022年に社会インパクト事業部を立ち上げました。
私たちが手がけているプロジェクトは、特定の自治体やクライアントに委託されたものではありません。これまでに培ってきたUXデザインとデジタルマーケティングの知見を社会へと広げ、多様な社会課題の解決を目指すのが私たちのミッションです。
──具体的には、どのようなプロジェクトが進行しているのでしょうか?
濱村: 私たちが最も重要視している社会課題は、首都圏一極集中による地方の過疎化と地域経済の衰退です。地方の社会を持続させていくためには、地域に人が集まる「にぎわい」を生み出し、新しい仕事・雇用を創出しなければなりません。そこで、第一弾のプロジェクトとして、愛媛県宇和島市にある廃校の利活用をスタートしました。宇和島市と連携して廃校をリノベーションし、いざというときの避難所として、また地域の人々や旅行者、地域企業・都市部の企業が集まる「場」として、新たに生まれ変わらせています。
また、私たちが新たに開発した地域活性型の公共空間CRMシステム「coconiko(ココニコ)」もリリースしています。「coconiko」は、公園やスポーツ施設、商店街、観光施設などの公共空間とその来訪・利用者である地域住民をつなぐシステムです。
現在、多くの自治体が、地域の公共施設や公園を活用し、イベントやお祭りなどを開催しています。ただ、正確な来場人数やユーザー属性の把握までは行っていないのが現状です。来場したのが地域住民なのか・観光客なのか、何を目的で来たのか、何を購入したのか、こうした情報が全く分かっていないのです。
「coconiko」は、QRコードを用いてイベントや施設への入場を管理し、入場者の属性管理を可能にしたアプリです。「coconiko」に集まったデータを利活用すれば、来場者のニーズをイベントの企画や施設運営に活かしたり、周辺の商店街への誘致や来場促進に向けた動きができます。実際に、宇和島市の姉妹都市である仙台市のイベントで「coconiko」を活用し、大変好評をいただきました。今後も様々な自治体へ「coconiko」を展開していきたいと考えています。
社会インパクト事業部の期待役割
──社会課題に取り組むセクションを設けている企業は少ないと思いますが、廣中さんは社会インパクト事業部にどんなことを期待していますか?
廣中: 私も地方自治体のプロジェクトに数多く関わってきたので、社会インパクト事業部が手がけているプロジェクトの重要性は肌で感じています。今後、濱村さんには、ぜひ「雇用」の先にある「教育」の問題も取り上げていただきたいです。首都圏在住者を地方へ呼び込むには、仕事だけではなく子どもの教育環境も重要です。地方でも首都圏と変わらないような教育を受けられるインフラが整えば、さらなるインパクトへ繋がると思っています。地方自治体が抱える課題は、場所は違えど似通っています。今後は宇和島市や仙台市との連携を強化してモデルケースを作り、地方自治体向けのパッケージにして提供することも考えています。地方行政のスタンダードになる新しい手法をぜひ生み出してほしいです。
今後、ネットイヤーグループが取り組むべきこと
──ネットイヤーグループ全体では、今後どのようなことに取り組まなければならないと考えていますか?
廣中: ビジネスだけではなく、生活環境も大きく変わりはじめている時代です。ですから、これまでの前提を根本から見直す必要があると考えています。今までのやり方に疑問があるのであればやめても構わない。現状維持ではなく、一度全部リセットして新たに再構築していくような取り組みが必要です。一緒に働くみなさんには、これまでの発想や考え方をぜひ変えていってほしいと思います。「ゼロから考え直す」「ダメならまたチャレンジする」といった風土が会社全体に根づいていくことを期待しています。大西: 今は、技術革新や市場の変化の速度が急速に上がっており、エンドユーザーの求める体験も刻々と変化しています。そういった変化に合わせて私たち自身もアップデートしていかなければならないですし、むしろ社会に変化を起こしていく側に立たなければならないと感じています。特に、生成AI技術の活用は必須で取り組まなければならないテーマだと考えています。パートナーとの協業に加え、自社でも新しいツールの開発を進めたりと、スケールの大きな取り組みを既にスタートしています。「既成概念にとらわれない」だけではなく、「既成概念そのものを壊す」ような取り組みができたら楽しいですね。
──今までの発想を変えるために実践すべきことはありますか?
廣中: 発想の転換は、日々の生活の中でも実践できるものです。例えば、通勤経路を変えてみる、最近会っていない友人に会いに行くなど、何でも構いません。意識して自分の行動を変えることが新たな刺激になり、思考の変化にも繋がっていきます。内にこもらず、どんどん外に出てほしいですね。濱村: 社会インパクト事業部では、社員の方々に新たな視点をもたらす一つの手法として、「プロボノ(職業上のスキルを活かして取り組む社会貢献活動)」という活動を提案しています。実際に、社会課題の解決に関心があるメンバーが事業部横断で集まり、アイデアを出し合ったり、一緒にものづくりをしたりしています。先ほどお話しした宇和島市の「廃校モールプロジェクト」のWebサイトも、有志のメンバーが空いている時間をみつけて制作してくれました。なかには、これまでWebデザインの経験がなかったメンバーもいましたが、周りから様々なことを学び、スキルを身につけています。社員同士の繋がりの中で自分の成長を実感し、社会にも貢献できる。こうした手触り感のある活動を今後も社内で広め、自分の新しい可能性を探れるような道を提供したいです。
マネジャークラス人材に求める資質や素養
──マネジャークラスの人材には、どのような資質や素養を求めますか?
大西: 今、デザインやものづくりの現場では大きな変化が起きています。何が正解か分からないまま手探りで試行錯誤をしていくので、なかには「本当にこれでいいのだろうか」と歩みを止めてしまう人も出てくるでしょう。多くのメンバーを束ねていくマネジャークラスの方には、こうした多様な人材を巻き込むことを楽しみながら、プロジェクトを推進してほしいと考えています。メンバーに興味・関心を持ち、相手が大事にしている価値観や目指したい世界・キャリアを聞きながら、全員が同じ方向を向いていけるようにリードしてほしいですね。三輪: 私がマネジャークラスの人材に求める資質は3つです。まずは、クライアントワークを楽しめること。多様な業界のサービスや商品に興味を持ち、クライアントにどんなソリューションを提供していくか、楽しみながら考えられる人が好ましいです。2つ目は、マーケットやテクノロジー、法改正などの変化を楽しめること。変化をビジネスチャンスと捉えて自分たちの中へ取り込み、お客様へ提供していってほしいです。3つ目は、組織を楽しめること。部門の枠を飛び越えて多彩な職種との交流を楽しめる人、会社の環境を使い倒せるような人がいいですね。
濱村: 社会インパクト事業部では、あまりITを活用していない地方の方々とも関わります。そういった方々に対して、地域の課題にフィットしたシステムを提案するためには、技術の本質を深く理解している必要があります。また、自ら手を動かしてモノやサービスを作ってきた経験があることも大事です。人と人を繋いでやらせてきたのではなく、自分で汗をかきながら経験を積んできた人でないと、地方の方々の信頼を得るのは難しいと思っています。もうひとつは、自分の価値観を押しつけない人です。私たちが若い頃は、時間を忘れて仕事に熱中するのが良しとされる時代でしたが、今は働き方に対する価値観も、働き方そのものも本当に多様化しています。様々な人の考えを受け入れ、事業に活かしていける柔軟な方と、ぜひ社会を変えていく活動に取り組みたいです。
廣中: 多様なメンバーをマネジメントしていく上で欠かせないのが、相手へのリスペクトです。クライアント、社内のメンバー、パートナー、お互いにリスペクトを持って仕事に取り組む姿勢が、ネットイヤーグループの根幹にはあります。ですから、何事にもリスペクトの精神を持って向き合える方にぜひ参加してほしいです。